“長老、長老”
“電池、電池を貸してください”
くぅちゃんは戻るなり、長老に言い寄りました。
“何事かな?”
長老は静かに尋ねました。
“大仏、大仏さまに電池を…”
そこまでくぅちゃんが言いかけた時、長老はすべてを悟りました。
“くぅ、よ”
“神聖な場所に行ってきたんだな?”
怒られる、と少し身構えたくぅちゃんの予想とは違い、
穏やかな口調で長老は続けました。
“我がペンギン一族は、大仏さまをお守りし、電池を守らねばならぬという秘密の掟がある”
“いずれ”、大仏さまが世界をパラダイスにしてくださるという言い伝えも、な。“
“今がそのときなのかもしれん。”
“このままでは、この土地も大寒波にやられるだろう。”
“くぅ、よ。”
“電池に、電気を貯めよ。”
“そして大仏さまにお供えするのだ!”
くぅちゃんは、ちょっと何を言っているのか、よくわからないのですけど、
といいかけて止めました。
とりあえず、ここは
“はい”
と言っておきました。
“さあ、とんでもないことになってきたぞ“。
“世界をパラダイスにする使命、か”
“電池に電気を貯めてお供えするだけの簡単なお仕事だよね”
くぅちゃんは楽天家なので、小旅行するくらいの気持ちで旅立とうと決めました。
“電気かぁ…”
村にも電気があります。しかし、これほどの大きさの電池を充電するための発電機はありません。
少し考えました。
そのとき、空でピカリ!光るものがありました。
“うーん、これだ!莫大な電気といえばカミナリだ”
とりあえず、長老に聴いてみます。
“カミナリから電気を取ろうと思うのですが…”
“それならば、カミナリさまのところに行きなさい”
“彼らもまた、我々ペンギン族のように、使命を託された一族…”
先に言ってよ、と思いましたが、とりあえず、礼を言い、出発です。
“カミナリさま、かぁ…”
カミナリさまは、気難しいことで有名です。雲の上から見下ろして、
腹がいっぱいになると、電気を吐き出します。
そう、まるでゲップのように。
白いカミナリさまが短気で、緑のカミナリさまが呑気だという噂があります。
“とりあえず、呑気なカミナリさまの方が話しやすいかな。“
“あの山の向こうにカミナリさまがいらっしゃるのか。“
大きな山です。
ペンギンには一苦労。
“うーん、雲の上にいるってことは、雲がこちらにくるまで待っていればいいのでは?”
くぅちゃん渾身のひらめきです。
待っている間、電池の書(取り扱い説明書)を読みます。
この電池は、カミナリを飛び越えると、大地と電池の間に挟まれたカミナリの電気量が増加する、と書かれています。
“ふむふむ”
“仕組みはよくわからないけど、電池を持って飛び越せばいいだな”
“人間の科学力ってすごいんだなぁ、なんで滅んだんだろう?”
カミナリさまを乗せた雲がなかなか近くまで来ないので、昼寝をすることにしました。
ビリビリ、ビリー
強烈な電気がくぅちゃんの身体を走ります。
“くぅわ~”
かつて一度も味わったことのない電撃です。
“ちょっと、止めてもらえます?”
くぅちゃんは、それをいうのが精一杯でした。
次から次へとカミナリが飛んできます。
“うわぁ、ちょっ、ちょっと~”
カミナリさまがおかしい?
“カミナリさま!”
返事もなく、ひたすらカミナリを撃ち落としてきます。
“電気を脳に受けすぎて、壊れてる…”
くぅちゃんはカミナリさまが話が通じる相手ではなくなっていることを察しました。
これは自力でカミナリを拾うしかなさそうです。
“くわー、くわー、くわー“
“ジャーンプ”
くぅちゃんは頑張って、カミナリを飛び越しました。
こころなしか、カミナリの色が変わった気がします。
“よし!充電完了!”
“逃げろ~”
カミナリをフル充電した電池を抱えて、カミナリが飛び交うエリアを抜け出しました。
“一度はカミナリを食らったけど、なんとかなった~”
くぅちゃんは満足気です。
しかし、このカミナリ充電を最低でも5回はやらないと大仏さまがフル充電しないということを、くぅちゃんはまだ知らないのでした。
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